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The Story Of Tele-Gib Miniature テレギブ・フィギュア・ストーリー

テレギブ1975年のアルバム『ブロウ・バイ・ブロウ』収録の名曲『悲しみの恋人たち』で使用され、特別なギターとしてジェフ・ベックが最も大切にしていると伝え聞く“テレギブ”。世界に1本しかないこのギターのレプリカ製作を、ジェフ・ベックが日本のファンのために特別に許可したことからフィギュア化が実現しました。
世界で初めて1/8スケール化された貴重なフィギュアを存分に楽しんでいただくために、再現に努めてきた課題やこだわりを紹介したいと思います。購入された方はぜひ“テレギブ”フィギュアを手に取りながら読み進めてみてください。楽しんでいただけるのではないでしょうか。
また、その製作過程は初出し画像とあわせてフィギュア公式facebookでも紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。 製作総指揮:株式会社ミッドレンジ
 中 伸介

まず注目すべき再現ポイントを挙げてみます。
①~⑭はジェフ・ベックのマネージメントがサンプル監修を行うということで、『ジェフ・ベック・ストーリー』の権利元に提出したテキストと同じものです。

  • 1弦2弦と3弦4弦を押さえる2つのストリングガイドを再現
  • ボディ表左下の木目の露出を再現
  • ピックガードをダークブラウンで再現
  • ボディカラーは1999年の取材時のTele-Gib modelを参考に再現
  • ネックカラーは『ライヴ・アット・イリディウム~レス・ポール・トリビュート』 を参考に再現
  • ボディ表・中央の目立つ傷と浅い傷を再現
  • ボディ表・右エッジの傷を再現
  • ボディ裏の傷を再現
  • ピックガードやコントロールパネル、ネックプレート、ペグなど全てのスクリューを エイジド加工
  • pickupとmounting ringをエイジド加工
  • ブリッジの鋭角な切断面を再現
  • ブリッジのFENDER刻印を再現
  • ペグの裏側とブリッジをエイジド加工
  • フレットの太さは21フレットのポジションマークと重ならないように調整

再現ポイントの数から言うと、ギターレジェンド・シリーズで最多。参考にした主な資料は以下3点です。

  • 資料A:
    『ライヴ・アット・イリディウム~レス・ポール・トリビュート』特典映像
  • 資料B:
    シンコーミュージック増刊「The Telecaster」
  • 資料C:
    1978年に出版されたPlayer増刊「The Beck Book」

音楽業界にその名を刻むギターであるにもかかわらず参考になる画像は少なく、資料集めに苦労したことが思い出されます。それでは製作当時を振り返りながらそれぞれのポイントを解説していきます。

わずか18㎜のヘッドにストリングガイド2個取り付けるのは初の試み!弦を抑え込むスペースを確保するために違和感を感じないギリギリのところにガイド位置を調整しています。実は製造工程で最も時間のかかるのが弦張りなので、非常に重要なパーツと言えます。
解説写真①
テレギブを特徴づける最重要ポイントです。印刷技術を駆使しボディカラー、木目の下地カラー、木目、境目の白ラインの順に重ねていきます。下地カラーの調合には11回のテストを行い完成!一番のこだわりは白ライン。ボディ中央に向かって薄くぼやけるように印刷版を何度も修正しました。
解説写真②
カラーが謎とされてきたパーツ。画像では黒にしか見えませんが…。似せたコピーモデルのピックガードも全て黒でした。しかし、製作者であるセイモア・ダンカン氏の「Tele-Gib Story」によるとダークチョコレートブラウンとのこと。1999年の取材時にインタビュアーが持参したテレギブ・モデルとの違いを質問すると「ピックガードがこげ茶っぽい」とコメント。インタビューしたジェフ佐藤氏にも直接お話を伺いました。カラー資料としてダークチョコレート画像など十数パターンをピックアップ。黒に近いブラウンから徐々に茶を増して3パターンを用意。最終的には髪の染料パッケージをもとにした最も茶の強いサンプルを監修に提出しました。監修にOKがでたことで、このフィギュアは「ジェフのテレギブを最も正確に再現したモデル」となりました。ピックガードはセイモア・ダンカンによるお手製。リアピックアップまわりの非対称な形状を再現しています。
解説写真③
ボディのブロンド・カラーは画像では見え方が全く違うので再現が難しいところ。前述したインタビュアー持参のテレギブ・モデルを見て「なんで俺のギターがここにあるの?」と驚いたということから、ジェフ佐藤氏に依頼しカラー合わせを行いました。ベック本人のお墨付きギターなので最善の方法だと考えました。
ネックカラーはボディカラーとのトータルイメージが重要です。知る限りテレギブの最新画像は2015年に発売された『ライヴ・アット・イリディウム~レス・ポール・トリビュート』の特典映像。フィギュアの完成イメージはこの映像に登場するテレギブです。何度も見返してキャプチャーした画像とカラー調合のたびに撮影したサンプル画像を比較。5回目のトライで完成しました。
ボディ表中央の目立つ傷はPlayer増刊「The Beck Book」を参考に、ボトムあたりの細長い傷や薄い傷はシンコーミュージック増刊「The Telecaster」を参考に傷をトレースしています。印刷版の密度を濃くしたり、薄くすることで傷の強弱を再現しています。
解説写真⑥
ボディ表・右エッジの傷はシンコーミュージック増刊「The Telecaster」を参考にしています。ボディの内側に傷が印刷されるとリアルさが半減してしまうので、エッジぎりぎりに入れるのが印刷工程上の重要ポイント。実は参考画像を拡大してみるとボディ表・左エッジにも傷が確認できるので初期サンプルでは再現していました。しかし画像正面からは拡大しないと見えず、傷が細くエッジから少しでもずれると残念な結果に。ミニチュアとしてのクオリティを優先し最終サンプルでは削除しています。
解説写真⑦
おそらくテレギブ・ボディ裏を見ることが出来るのはこの本のみではないでしょうか。Player増刊「The Beck Book」を参考にしています。ネットでその存在を知り、Player編集部に問い合わせたところ、1冊だけ保管しているとのことでお借りすることができました。ボトムぎわや弦穴ちかくの傷のトレースが難しく、初期サンプルから2度の修正を経て完成。全体的にのっぺりしないように小さな傷を付け足しています。
解説写真⑧
すべてのネジ(スクリュー)にエイジド加工を施したのはシリーズ初!スミを入れてふき取ることで、ネジ頭や周囲にスミが残り経年変化で古くなった様子を再現しています。
解説写真⑨
マウンティングリングとはエスカッションのこと。ピックアップはテレギブの重要パーツ。2列のマグネットのディテールからその横に配置された小さな穴まで、その形状の再現にはこだわりました。塗装ではピックアップとエスカッションの隙間にスミ入れすることで奥行きを出しています。同時にエイジド加工はスミのあとに茶を入れふき取ることでホワイトピックアップのマグネット周辺がよりリアルな仕上がりになりました。
解説写真⑩
ブリッジはハムバッカー・ピックアップの搭載にあわせてFENDERロゴの上あたりから切断されています。Player増刊「The Beck Book」の掲載画像を見ると切断面の左右壁面の角はほとんど処理されておらず、ほぼ鋭角のまま。弾きにくくないのかなと思いつつも再現しております。製造経験値の積み重ねからブリッジ壁面の厚みをより薄くすることにチャレンジ(薄くしすぎると不良の原因となります)。1952テレキャスター・フィギュア(注3)をお持ちの方は比較してみてください。
解説写真⑪
FENDERロゴの刻印を再現!その下にはパテント表記を彫り込んでいいるのですが、肉眼ではほとんど読めません。
解説写真⑫
ヘッド裏のペグ一体パーツにもスミ入れ・ふき取りを行いエイジド加工。これもシリーズ初です。ブリッジは茶系のエイジド加工をいれることでシルバーの光沢を抑えました。コントロール・パネルとのシルバー対比を見事に再現できたと思います。
解説写真⑬
テレギブには太目のフレットが使用されているのですが、太くすると21フレットのポジション・マークと重なってしまいました。サンプルを作成し調整したうえで、ほぼ従来通りのサイズとしています。
解説写真⑭

以上、ポイント解説でした。監修にはあえて再現しなかったポイントも提出したのですが、長くなるので割愛します。フィギュア公式facebookで紹介するかもしれません。興味あれば訪問してみて下さい。

Fender公式フィギュア“テレギブ”が付属する本作は、海外のファンには入手すら難しい贅沢な企画!まさにジェフから日本のファンへのプレゼントと言えるのではないでしょうか。謎を解き明かしたピックガードからネジ1本1本のエイジド処理までこだわったシリーズ最高クオリティー“テレギブ”フィギュアをお楽しみください。

※写真はサンプルです。商品とはカラーや仕様など一部異なる場合があります。

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