60年代にヤードバーズでデビューしてからジェフ・ベック・グループ、ベック・ボガート&アピスやソロキャリアを重ね、現在に至るまで未だに衰えない技術と進化を続けるロックギタリスト、ジェフ・ベックがデビュー50周年の節目に行った2016年8月10日のスペシャル・ライヴを収録
スティーヴン・タイラー(エアロスミス)、70~80年代にかけてコンビを組んだキーボーディスト、ヤン・ハマーを初め、ブルース界の大御所バディガイ、ZZトップのビリー・ギボンズや実力派女性シンガー、べス・ハートをゲストに迎えた、まさにスぺシャルな一夜を迎えた
ヤードバーズの「ハートフル・オブ・ソウル(ハートせつなく)」「フォー・ユア・ラヴ」やジェフ・ベック・グループ時代の「ベックス・ボレロ」「ライス・プディング/モーニング・デュ窶煤vといったレアな曲も披露。「哀しみの恋人達」「フリーウェイ・ジャム」「蒼き風」といったソロの代表曲から、終盤にはスティーヴン・タイラーをヴォーカルに迎えた「トレイン・ケプト・アローリン」「シェイプス・オブ・シングス」で夢のような共演が実現。またアンコールでは当時亡くなって間もなかったプリンスの「パープル・レイン」を演奏するなど、まさにジェフ・ベックの50周年に相応しい見事なステージ!
『ジェフ・ベック / ライヴ・アット・ザ・ハリウッドボウル2016』
DVD & ブルーレイ 発売記念 一夜限りの上映会
ジェフ・ベック歴50年の音楽ライター佐藤晃彦さんによるイベントレポート!
9月27日に日本で先行発売になる映像作品『ジェフ・ベック / ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル 2016』の先行上映会が9月20日・渋谷クアトロで行われた。ジェフの映像が会場や映画館で公開されるのは珍しいことだ。
50年代後半ジェフ少年はロカビリー・ギターに憧れ、66年にブリティッシュ・R&R・ブルース・バンドに加入しデビュー。自己のグループではハードなブルースを目指し、やがて多くのライバルとハード・ロック・ギタリストとして名を上げる。そしてバンド・メンバーを試行錯誤しながら、愛器ストラトキャスターとファンク・ソウル・ミュージックを敬愛した。更に、フュージョン・ミュージシャンとの交友から、「自身の音楽=ギター・インスト」という到達点に達する。更にインプロヴィゼーションや次々挑戦するニュー・サウンドにも満足せずギターのニュアンスの極限を求め、ヴォーカリストと同等の表現力を手に入れ唯一無二のスタイルを築き、正に「ギター一筋50年」という生き様を、たった2時間弱のコンサート映像に見事に凝縮したライヴ映像となっている。
デビューから50周年のライヴ、私は67年頃にラジオで聴いたヤードバーズが初ベック、初めてレコードを購入したのが68年。そしてライヴは73年初来日のBBAから、東京・横浜近郊は逃さず地方や海外も時折足を運び100回以上のライヴを経験、自分のギター・スタイルも音楽性もジェフから影響され続けてきたのだが、まさか50年も聴き続けるとは思ってもみなかった。彼は映像作品が少ないこともあってか、大画面でジェフ・ベックを観るのは意外にも初めてだったかもしれない。
会場には比較的静かな大人の熱心な観客が200人ほど、映画は静かに始まった。序盤でのヤードバーズから初ソロ・アルバム『トゥルース』への流れ、自身の思い出も蘇えり個人的にはもう頂点!観客もだんだんとのめり込んでいくようだった。いつもより凄くご機嫌なベックの表情のアップに観客も私も(笑)和む。無口であまり人間性が表に出てこない人だけに、嬉しい瞬間だ。最初に観客が沸いたのはヤン・ハマーの登場だろうか、ちょっと太ったおじちゃんがひょうひょうと登場、久しぶりのベックとのショットは感動モノ。ヤンのあのモノ・ムーグの音色こそ、70年代中盤のフュージョン・ベックの象徴、彼の存在の大きさを改めて感じさせられた。ゲスト陣が次から次へとテンポ良く入れ替わり、ビリー・ギボンズ、バディ・ガイ、スティーヴン・タイラー等、これまでスペシャルなライヴは何度もあれど、ここまで豪華なショーは始めてである。ドラムやベースの生々しいサウンドが会場ではさらに強調され、クアトロの観客からは次第に自然と拍手が生まれるようになり、楽曲が終わる度に、さらにゲストが登場する度に拍手と喜びの笑いが起き、本当に目の前でコンサートが行われているような気分にもなった。ロカビリー、ブルース、ロック、ソウル、フュージョン、スタンダードまで、ここまで多岐に渡ったジャンルを一本のストラトで次々と演奏するのは流石。最後は意表をついたプリンスの「パープル・レイン」、あまり自身で作曲をする人でないだけに、選曲が幅広いのが返って彼のギターの「ジェフらしさ」を演出していたかのようだ。
自宅のモニターもだんだん大きくなり、ブルーレイでの映像の進化はもの凄いが、こういった会場の上映会、また違った感動があって、観客全員、楽しい2時間であった。
佐藤 晃彦