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調性で読み解くクラシック

調性で読み解くクラシック

1冊でわかるポケット教養シリーズ

吉松 隆の 調性で読み解くクラシック

長調は「楽しい」、短調は「悲しい」?作曲家はどうやって調性を選ぶの?調性(スケール)については不思議なことがいっぱい。
作曲家の吉松隆氏が分かりやすく解説します!
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和声法だのコード進行だのを何も知らなくても、
最後の「ジャーン」という和声に辿り着くと誰でも「ああ、終わった」という解放感に満たされる。
この書では、そんな「ハーモニー」や「調性」の謎と秘密について、独断と私見も含めて解説してゆこう。(本書「はじめに」より)
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  • 定価:1,026

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特集記事 -Interview-

“1冊でわかるポケット教養シリーズ”から2014年9月にリリースされた『吉松隆の調性で読み解くクラシック』が、音楽書の話題を集め増刷が続いています!
ヤマハ銀座店の書籍売上ランキングでは発売から1年間連続1位を記録している本書は、専門的に音楽を学ぶ人だけでなく、幅広い層に支持されています。
そこで今回は、著者である作曲家・吉松隆さんに、この本の魅力についてお話をうかがいました。

僕の音楽人生は、「何でこの曲聴くと涙が出るの?」というところからスタートしました。

──“調性”という言葉は、ちょっと難しいなと思うのですが……。

我々が日常生活の中で、「今日は調子がいい」とか、「調子に乗ってる」とか言うでしょう。“調”という感覚自体は、私たちの日常に言葉として染み付いているものなんです。
その「調子」をクラシックで難しく言うと、ハ長調、ヘ長調とかいう「ハーモニー」のシステムになんですけど、うまく響けば「調子がいい」、鳴りにくければ「調子が悪い」「調子が狂う」となる。同じですよ。

おもしろいのは、この「調子」の善し悪しは単なる「感じ」だけでなく、科学的な裏付けもあるということですね。しかも東洋と西洋、キリスト教と仏教など、民族や文化的背景によって「調子が良い」の定義は変わってくるわけです。そういったことを、いろんな視点から解説したのがこの本です。

──作曲する時、調は最初に意識するものですか?

現代のモダンオーケストラの場合、楽器の性能も演奏技術も進化していてほとんどすべての調を自在に使えるのであまり考えなくていいのですが、特定の楽器にソロを取らせる場合、一番の聴かせどころではその楽器の一番いい音を出したいですよね。
すると、どのキーを使うかという問題は非常に重要になってくる。なので、一番聴かせたい音をもっとも効果的に使うために、逆算して音楽を積み上げていくこともありますし、逆にもっとも鳴りにくい音を意識して使うことだってあります。

たとえば、「展覧会の絵」のように異教徒的な響きがする音楽の場合、白鍵だけだときれいに響きすぎちゃうけど、黒鍵だらけにすると不思議な響きに持ち込めるなんてこともありますしね。
楽器もそうだけど、音楽家にもそれぞれ“自分好みの調性”があるようで、僕の場合はト短調やニ短調が多い気がします。長調は苦手ですね(笑)。

僕の作品を聴いた人から、「鳥が鳴く時、必ずマイナーキーで鳴いてる」とか「今回は長調で鳴いてるけど珍しいね」なんて言われたり……。ただ僕は、いわゆる長調短調でなく、ドーリアやフリギアのようなモード(旋法)で書いているから、あまり長短調の枠にははまらないのですが。
たぶん影響を受けた音楽や思想、あるいは出身などの文化的背景によって、その人がどんな調性で感動するかは微妙な個人差があります。そして、それによってその人のルーツをたどることもできるのではないかと、この本を書いていて感じました。

──日本では、西洋音楽のような“調性”の概念が薄いのですか?

日本に西洋の“調性”という概念が入ってきたのは、明治中期頃になってから。つまり、たった百数十年ほど前の話なんです。
今では幼少期からあたり前のように「ドミソ」を習うので、僕たちはそれが音楽の基本だと思っているけれど、西洋音楽が入って来た当初は、日本人にドミソを歌わせると、どうしてもミの音を半音低く歌っちゃう。
たとえば「ひな祭り」という曲(♪今日は楽しいひな祭り〜)は、短調にもかかわらず「楽しい」と歌ってるでしょ(笑)。長調よりも短調の方が、日本人の体に染みついていたんです。

ちなみに、もっとむかし平安京の時代、日本は「雅楽」が音楽の中心だったわけですが、そこでは平調(ひょうじょう)とか壱越調(いちこつちょう)という六つの調があって、調それぞれに対応する季節(春夏秋冬)や方角(東西南北)などが決まっていた。
ということは、東からは東の音、季節が夏なら夏の音が鳴らなくてはいけないわけです。そこで、平安京のお役所には音楽を取り仕切る部署があって、毎日毎日「今日は何調の曲を演奏すべきか?」を専門スタッフが徹底的に研究していた。
今からすると非科学的だけど、当時は「国の安泰」とか「世の平安」に関わる重要で厳密な音楽理論だったのです。その時代には、当然まだ西洋音階も入ってきてなかったし、そもそも長調や短調という概念がないわけで。

じゃあ、何で長調を聴いたら楽しくて、短調を聴いたら悲しいなんて言い出したんだろう? なんて素朴な疑問もわいてきますよね。
ドミソという西洋の三和音が、数学的にも美しく確立されたものであることはわかるんだけど、何となくキリスト教的な音楽の概念として押し付けられたような気もしたり……。

実際、200年前の日本にタイムスリップしたらドミソはなかったわけですし、当時の日本人は西洋人の鳴らすドミソと4拍子の音楽を「気持ち悪い」と感じ、西洋人は日本人の音楽を「非音楽的なヘンテコな響き」と言ってたそうですから。

日本の場合、きれいに整った丸(長調)よりも、少し傾いている方(短調)が美しいといういわゆるワビサビ的な美的感覚もあるわけです。
それは民族的な価値観の問題なのですが、この本を読んでそういった部分にも考えを巡らせていただけるとうれしいですね。

音源視聴 -Listening-

本書に掲載の曲例を音源でご紹介!さまざまな「調」や「旋法」について、見て聴いてお楽しみください
音源紹介箇所: 【scale 6】それぞれの調性の特徴と名曲(p170~199) ℗ 1988-2009 Naxos Rights US,Inc. Licensed by NAXOS JAPAN,Inc.

[長調]

C

明るく真っ白なイメージで開放的

ハ長調独:C-dur 英:C major

  • ベートーヴェン 交響曲第5番 <運命> 第4楽章

  • モーツァルト ピアノ・ソナタ ハ長調 K545 第1楽章

G

弦楽器がよく鳴る、春っぽいサウンド

ト長調独:G-dur 英:G major

  • モーツァルト セレナーデ第13番 <アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク> 第1楽章

  • J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲 第1番 第1楽章

F

ホルンが活躍、牧歌的な雰囲気を持つ

ヘ長調独:F-dur 英:F major

  • ベートーヴェン 交響曲第6番 <田園> 第1楽章

  • R・シュトラウス 交響詩 <ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら>

D

神(Deus)を連想させる、祝祭的な響き

ニ長調独:D-dur 英:D major

  • ベートーヴェン 交響曲第9番 <合唱付き> 第4楽章

  • ヨハン・シュトラウスⅠ ラデツキー行進曲

B♭

明るく軽やか、管楽器がよく鳴る

変ロ長調独:B-dur 英:B♭ major

  • シューベルト ピアノ・ソナタ 第21番 第1楽章

  • ムソルグスキー/ラヴェル編 組曲 <展覧会の絵>より「プロムナード」

A

ニ長調とともに作曲家に人気

イ長調独:A-dur 英:A major

  • ベートーヴェン 交響曲第7番 第1楽章

  • ボロディン 歌劇<イーゴリ公>より「ダッタン人の踊り」

E♭

ベートーヴェンの影響大、「ヒーロー」のサウンド

変ホ長調独:Es-dur 英:E♭ major

  • ベートーヴェン 交響曲第3番 <英雄> 第1楽章

  • ホルスト 組曲<惑星>より「木星」

E

のどかな響きで自然をイメージさせる

ホ長調独:E-dur 英:E major

  • ロッシーニ 歌劇 <ウィリアム・テル> 序曲

  • グリーグ 組曲<ペール・ギュント>より「朝」

A♭

黒鍵駆使のピアノ曲で、ショパンがお気に入り

変イ長調独:As-dur 英:A♭ major

  • シベリウス 交響詩 <フィンランディア>より

B

オーケストラでは不人気だが、ポップスでは多し

ロ長調独:H-dur 英:B major

  • ヴェルディ 歌劇<リゴレット>より「女心の歌」

D♭

ピアノの小品に名曲が揃う

変ニ長調独:Des-dur 英:D♭ major

  • ドヴォルザーク 交響曲第9番<新世界より> 第2楽章

F#

曲例はほぼ見当たらず、ポップスで多少あり

嬰へ長調独:Fis-dur 英:F# major

G♭

かろうじて有名曲は<ネコふんじゃった>

変ト長調独:Ges-dur 英:G♭ major

[短調]

Am

ストレートな「陰り」が魅力の基本の短調

イ短調独:a-moll 英:A minor

  • ベートーヴェン エリーゼのために

  • グリーグ ピアノ協奏曲 第1楽章

Em

愁いのある響きでセンチメンタルを誘う

ホ短調独:e-moll 英:E minor

  • メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲 第1楽章

  • ナルシソ・イエペス 禁じられた遊び

Dm

ドラマティックで「人生」を感じさせる

二短調独:d-moll 英:D minor

  • J.S.バッハ トッカータとフーガ

  • ベートーヴェン 交響曲第9番 <合唱付き> 第1楽章

Bm

響きにくさが「暗い宿命」を描き出す

ロ短調独:h-moll 英:B minor

  • チャイコフスキー バレエ音楽 <白鳥の湖>より「情景」

Gm

暗い響きだが、ダイナミックな曲が多い

ト短調独:g-moll 英:G minor

  • モーツァルト 交響曲40番 第1楽章

  • ヴェルディ レクイエムより「怒りの日」

F#m

くすんだ響きの個性的な曲が並ぶ

嬰へ短調独:fis-moll 英:F# minor

  • フォーレ パヴァーヌ

Cm

光の「ハ長調」と鮮やかな対比をなす影の短調

ハ短調独:c-moll 英:C minor

  • ベートーヴェン 交響曲第5番 <運命> 第1楽章

  • ショパン エチュード第12番 <革命>

C#m

くすんだ幻想を思わせる響き

嬰ハ短調独:cis-moll 英:C# minor

  • ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第14番 <月光> 第1楽章

  • ショパン 幻想即興曲

Fm

暗く重たい響きの中にドラマ性を帯びる

へ短調独:f-moll 英:F minor

  • ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第23番 <熱情> 第3楽章

  • デュカス 魔法使いの弟子

G#m

ほとんどの作曲家が選ばなかった貴重な調

嬰ト短調独:gis-moll 英:G# minor

  • ムソルグスキー/ラヴェル編 <展覧会の絵>より「古城」

B♭m

ごくわずかな使用例の中に名曲が並ぶ

変ロ短調独:b-moll 英:B♭ minor

  • ショパン ピアノ・ソナタ第2番 <葬送> 第3楽章

D#m

ほとんど使われない貴重な調

嬰二短調独:dis-moll 英:D# minor

E♭m

話題になったロック×クラシックの作品で聴ける

変ホ短調独:es-moll 英:E♭ minor

[そのほかの音階/施法]

アトムのオープニングで有名

全音階独:diatonische Tonleiter 英:diatonic scale

  • 全音階

現代音楽の基礎となった「無調」

12音音階独:Zwölftöne Skala 英:twelve-notes scale

  • 12音音階

おもに中世ヨーロッパの教会で使われた

教会旋法

  • ドーリア

  • フリギア

キャラクターのはっきりした民族固有の旋法

5音音階独:pentatonische Tonleiter 英:pentatonic scale

  • 5音音階

ジャズやブルースの基本「ブルー」な響き

ブルーノート・スケール英:blue note scale

  • ブルーノート・スケール

メシアンによる半音だらけの音階

移調の限られた旋法

  • 移調の限られた旋法

半音よりさらに狭く、もはや聞き取り不能

微分音階

「調性で読み解くクラシック」について、吉松隆がさらに語る!ナクソス特設サイトはコチラ

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吉松隆 ディスコグラフィー

  • 吉松隆 作品収録アルバム

    吉松隆氏の代表作
    「朱鷺によせる哀歌」収録
    日本管弦楽名曲集

調性ごとにクラシックの名曲を集めたアルバムがiTunes Storeにて音楽配信中!

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